飢餓海峡映画 感想
2010年11月16日
なみログ at 01:13 | 芸術
飢餓海峡の映画。
正直イマイチだった。
三国連太郎は、よかった。
何がいけなかったのか、原作を読んでいるので、ストーリーのあらましは知っているわけだが、それが仇となったのか、冒頭から説明が過ぎてしまい、なにか弁士による無声映画を見せられているような、紙芝居を見せられているような、そんな感じがした。
しかし、説明がなければ、話の筋も掴めないかもしれないので、なんともはがゆい感じがするが。
それから、ほぼ原作通り、津軽海峡での遭難事故、大火、杉戸八重の十年、犬飼多吉の十年と犯罪、が網羅されており、平均的に描かれている点では筋が分かりやすかった半面、どうしても伝えたいところがどこなのか、監督の思いが希薄になってしまった感が否めない。
いっそのこと、前半の遭難事故と大火あたりははしょってしまい、十年たった今と、犬飼多吉の歩んだ壮絶な前半生をもっと深く描いた方がよかったのかもしれない。
もちろん、八重だって壮絶な前半生を生きているわけで、どちらの立場にたったとしても心を打つ作品には仕上がると思う。
原作を読んだかぎりにおいては、飢餓海峡は、津軽海峡を指すだけではなく、犬飼多吉こと樽見京一郎の、虐げられた故郷での極貧の生活、北海道の過酷な自然条件に涙をのんだ開拓生活。そのすべてが、かれの飢餓海峡であり、八重の前半生もまた飢餓海峡の連続でもあったということだと感じる。
ラストシーンでは樽見京一郎(三国連太郎)が、津軽海峡を渡る連絡船の上から海上に身を投げて終わるのだが、なんともいえない後味の悪さだけが残るだけで、三時間の映画の中に、ぼくはどこにも救いの光を見つけることができなかった。